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愉快で素敵な物語(3)「最後のおにぎり」Hさん

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お客様とのエピソード集

「ぼんご」のおにぎりがくれた小さな奇跡

「わたし、ボケてきてるからさ・・」

おばあちゃん, 高齢者, 老婦人, 老齢

 

東京の大塚という街でホームヘルパーをしていた頃のお話です。

 

Hさんという女性は1人暮らし。

認知症とガンを患っていました。

 

ご家族は「一緒に暮らそうよ」とずっと言っていたらしいですが

 

ご本人は、ご主人と暮らした家から離れたくない、と

1人で頑張っていました。

 

 

認知症状がだんだん進んで、買い物や洗濯など

家事が出来なくなってきたので、ヘルパーとしてはそこをサポート。

 

短期的な記憶も失われていく中で

それでも住み慣れた家の中で

大きな事故もなく過ごしていて

いつも冗談を言いながら笑っていたのが印象的でした。

 

ただ、ふと寂しげというか

自分を奮い立たせるために明るくしているというか。

 

私、ボケてきてるからさ。なんかおかしいこと言ってたら教えてね

時々、そう言っていました。

 

これは、今も他のお客様からよく言われるセリフ

 

やっぱり、どこかで「人に迷惑をかけたくない」

「私、どうなっちゃうのかな・・」という、大きな不安が感じられます

 

Hさんの願い

シニア, お年寄り, 人, カップル, 年, 友達, 余暇, 年金受給者

 

Hさんは「まだまだやりたいことあったんだけどなあ

というのも口グセでした。

 

「何がしたいんですか?」と聞くと

ぼんごのおにぎりが食べたい」と。

 

ぼんごは、大塚にある老舗のおにぎり屋さんです。

 

このエピソードは15年以上前のことですが、今も営業しています

 

今調べたら、1960年創業なので、なんと半世紀以上!

日本一美味しいおにぎり」とも言われているみたいです。

 

https://www.youtube.com/watch?v=zftZlqLZdLA

 

Hさんは以前、こちらのおにぎりを

今は亡くなったご主人と食べに行くのがとても楽しみだったそうです。

 

「今は私もガタが来てて、お店に行ったら迷惑かけちゃうけどさ。

 あそこのおにぎりは絶品。食べたいわあ。あんた、食べてみな」

 

そういうお店があるんだ。おにぎり専門店って行ったことないけど

どんな感じなんだろう?

 

家から近いところにあったので、休みの日に「ぼんご」に行ってみました。

 

すでに行列が出来ていて、少し待ってから入店。

 

カウンターに座り、筋子と鮭のおにぎりとお味噌汁を注文。

 

出てきたおにぎりは標準より大きくて、食べるとふんわりしていて

とにかく、とにかく美味しかった。

 

メニューも数え切れないくらいあり、全部が美味しいんだろうな、と。

 

次のHさん宅に訪問した時

 

ぼんご行ってきました。めちゃくちゃ美味しかったです」と伝えると

「そうだろう」と、まるで自分の店を褒められたように胸を張っていました。

 

認知症で記憶が薄れようが、思い出に残る味って・・

すごいことだなあと思います。

 

最期のおにぎり

白い花

 

後日、Hさんのご家族に電話でその話をしました。

 

あのおにぎり、もう一度食べさせてあげいたいですね

ということになりました。

 

実はHさん、心臓が悪くて塩分制限もあったので

私もおいそれとは買いに行けなかったのです。

 

そしてその時に初めて聞いたのですが

もう先は長くないと医師から言われていたそうで。

 

ご家族は遠方にいるので、すぐにおにぎりを買いに行けない。

 

おふくろに、ぼんごのおにぎり買ってあげてもらえませんか

と、ご家族が言いました。

 

 

次の訪問日、Hさんに

おにぎり、何が食べたいですか?買ってきます

と堂々と言えるのが嬉しくて。

 

Hさんの顔がいつもの何倍増しで輝きました。

 

「そうだなあ・・やっぱり筋子かな!」

「分かりました」

 

ぼんごに行き、今度は割と早く注文が出来たのですぐに持ち帰り。

 

おにぎりを見た時の、Hさんの表情は今も忘れられません。

 

大事そうに、1口ずつ食べていました。

 

その頃には食欲も落ちてきていましたが、大きなおにぎりを1個食べ終えて

 

・・・本当に美味しかった」と言いました。

 

それから半年くらいした時、Hさんはお亡くなりになりました。

 

亡くなったあと、ご家族から

買ってきてもらったおにぎりのこと、おふくろは入院先でも

 いつも『うまかった~』って話していましたよ」と聞きました。

 

 

ヘルパーとしては

ただ「買い物という作業」をしているだけじゃなく

その人の思い出とか、ちょっとした願いとか

そういう部分に触れることがあるんだと感じました。

 

Hさんが亡くなったあとも、時々「ぼんご」に伺い

おにぎりを食べるたび

あの「本当に美味しかった」という表情が浮かびました。

 

なんだか、また食べたくなってきたなあ。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました(^^♪

 

 



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