東日本大震災の日、老人ホームにいた。
食堂でおやつを配っていたら・・
2011年3月11日。
東日本大震災が起きた日。
私は有料老人ホームで介護主任をしていました。
入居者の皆さんが食堂に集まり
15時のおやつを配っている時、大きな揺れが起こりました。
「何だかいつもと違う揺れ方だな・・」と思いながら
入居者さん達とお互いに「落ち着こう」と言い
揺れがおさまるのを待ちました。
その施設は埼玉県浦和にあり、当時の震度は5くらいだったでしょうか。
頑丈な建物だったこともあり、けが人もなく、居室で壊れたものもなく。
「大きな地震だったねえ」みたいな感じで安堵していました。
そのうち、食堂にあるテレビに
震源地、次々更新される震度、津波の映像などが流れてきます。
時間を追うごとに
とんでもないことが起こっている・・
何か抵抗できないような不気味なことが起きている。
そこにいる入居者さんやスタッフみんなが、そんな気持ちになりました。
その日は交通機関がマヒしていて家に帰れず
各入居者さんのご家族に連続で電話して、無事を伝えました。
すぐに「計画停電」への対応が始まりました。
エレベーターも使えないから、1階の厨房から非常階段を使って
リレー方式で食事を運んだり
居室の電気も消えてしまうので、頻繁に安否確認。
トイレにはポリバケツを置き、いつでも水洗になるようにして
お風呂が使えないので、清拭をしに居室をまわる。
夜になると不安になる入居者さんが多く、なんとなく食堂に集まりました。
スタッフも不安だった。救ってくれたのは・・
懐中電灯をいくつかのテーブルに置き
それぞれにスタッフがまわって、世間話のような会話をします。
スタッフも実は不安だったので
知らず知らずのうちに「元気出そう」みたいな言い方になっていました。
若い女性のスタッフが「大丈夫、大丈夫・・」と言いながら泣き出し
入居者さんが「心配いらないよ。空襲に比べれば全然」と抱きしめてくれ
そのスタッフがしがみついて号泣していたのを覚えています。
入居者さん達が東北を映し出すニュースを見ながら
手を合わせていた姿は
他人事を見ているというよりは
何かを思い出しているようでした。
「もうこれ以上、悲しい人間を増やさないでくれ」
と言っているようでした。
その時、入居者さんたちが動じていないというか
「こんなこともあるわいな」みたいな感じなのを見て
「ああ、この人たちは戦争を乗り越え
それからも激動の時代を超えて、ここにいるんだ・・・」と
人間的な強さを思い知りました。
私は震災について、何も語ることは出来ません。
ただ、その時の入居者さん達の強さとしなやかさを
ここに覚えておきたいと思います。
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